(カイアッツォ産)オリーブは、ピッツァその他における要である

これまでに掲載して来た記事に確認できるように、ピッツァを特徴づける要素の例としては、イースト、トマト、そして時にオリーブが挙げられる。オリーブオイルだけではない。オリーブそのものも、これに含まれる。この点に関しては、「抗腫瘍」パスカリーナ・ピッツァを取り上げた際に、すでに考究した。

科学的アプローチを経て誕生した、私が愛してやまないこの実に独創的なピッツァでは、カンパ―ニア州カゼルタ県特有、カイアッツォ産オリーブ(カイアッツァーナとの呼称も持つ)との出会いが待っている。ここで、一度おさらいをしておこう。

オリーブの熟成度の差

極端に特殊、また逆に一般的過ぎる話は避ける。オリーブが、ヨーロッパ・アフリカ・アジアの大陸を問わず、地中海地域全域に流布するオリーブの木 ― アメリカやオーストラリア(ただしここでは、Olea europaea L.種は寄生植物とされる)大陸と言った遥か彼方でも見られるようになって久しい ― に生る果実であることは、知らぬ者は無いだろう。その果実は、一般的には10月~12月に収穫し、その成熟度、木が植えられた土地の地質、脂肪とポリフェノール含量に応じて、実の状態での、またはオイル生産に用いられる。

グリーンオリーブとブラックオリーブの存在。その違いは?まず、熟成度である。褐色系のオリーブは、これが高い。真っ黒なもの ― 特にそのままつまめるオリーブの場合 ― は、天然色素を加え、色味をより鮮明で魅力的にしたものである。栄養的には、ブラックオリーブは熟成度が高いため、炭水化物、そしてタンパク質、脂質の含有率が高い。

ここで、カイアッツォの特殊なオリーブに戻ろう。その一帯、もしくはこれを扱う業者の間で浸透しているのが、「手が染まらなければ、カイアッツァーナじゃない」という言い回しだ。カイアッツォのオリーブは、成熟が大変早生な種で、明るいものからダークなものへの変色が、9月末から10月半ばと大変早期に起こる。完熟した実は、内・外部ともワインのような赤色となる。収穫した実は、通常ローリエ、塩、フェンネルシード、唐辛子で味付けし、15~20日程発酵させる。発酵期間が終了した実をオーブンで数時間乾燥させたら、食卓へ。

カイアッツァ―ナ・オリーブ

ピッツァ・パスカリーナのトッピングに、なぜオリーブが選ばれたのか?オリーブは、主に脂質、脂肪、特に一価不飽和脂肪酸、そして多価不飽和脂肪酸、(少量の)飽和脂肪酸が摂取できる食品である。

その脂質の中で最も重要なのが、オメガ9系に属するオレイン酸である。この脂肪酸は、高血圧抑制作用を持つ¹ため、バター、ラルド、ラードが含有しているような動物性の脂質よりも積極的に摂取すべきものである。またこれは、腎臓の機能を司るホルモン、アンジオテンシンIIの阻害物質 (要するに、一定の酵素やホルモンの作用をブロックするもの) として作用することが確認されている。

また、もう一つの特徴として、コレステロール値をコントロールできることが挙げられる。血中HDL(善玉コレステロール)濃度を高めると同時に、LDL(悪玉コレステロール)の濃度を下げる助けとなる²。

コレステロールとその周辺と言えば、オリーブは、フィトステロールを豊富に含んでいる。この物質は、保健省が毎日2~3gの摂取を推奨する化合物である。同省は、その摂取は動脈を「掃除」し、アテローム性動脈硬化に絡む問題の回避につながるとしている³。オリーブを唯一無二の存在とするもう一つの特徴は、ビタミンB3の特殊な形態であるナイアシン の存在である。あまり知られていないこの特異なビタミンが不足すると、人間は「ペラグラ」にかかる。これは、皮膚の乾燥を特徴とする疾患で、皮膚のひび割れを始め、神経的な問題ももたらす。

結論として、我々は、Km 0(註:フードマイレージを抑えた、地産地消的なあり方・活動)の世界に生きるという幸運に浴している。エキゾチックな産物を購入することも、しないことも可能だ。その一方で、我々の家のすぐそばには、味はもとより、その豊富な栄養分が研究され、世界がうらやむ食品が存在している。

国立腫瘍研究所パスカーレ財団(ナポリ)が示したように、我々は美味しくかつ健康に良いものを、キッチンで創造できるのだ。そしてこの事実は、我らが愛しのピッツァにも当てはまることなのだ。

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