グリエルモ・ヴオロに問う、「マリナーラ用ベスト・トマトとは?」

Column by Nunzia Clemente — 4年 前

ピッツァに用いるトマトに関する疑問は、見方によって、古くも新しくもある存在である。トマトが誇る豊かな品種のバラエティは、アメリカ大陸からやってきた、人類へのまれに見る恵みである。ただしピッツァ(もしくはその祖先)は、突出した酸味と、生地と他のトッピングの間の調和を図るこの果実による加護に、その誕生時から浴していたわけではない。

 とはいえ、今日のピッツァの概念は、トマトと分かちがたく融合していることは否めない。ここ20年来、小麦粉業界によるトマトへの注目度は高まる一方であり、この熱いまなざしは、フィアスコーネやサンマルツァーノDOP他の品種の再発見・栽培再開という、喜ばしい現象をもたらしている。
 「ピッツァに最適のトマトは何か」 -その回答を求めて、我々はナポリピッツァのマエストロの一人で、トマトをめぐる論争を最初に成文化した、グリエルモ・ヴオロGuglielmo Vuoloの門を叩いた。ヴェローナとフィレンツェのピッツェリアGuglielmo Vuolo、ナポリのPizzeria 4Aを率いる彼は、この真っ赤な果実と生地に着目した、最初のピッツァイオーロである。彼の緻密な研究成果は、ジャーナリストのモニカ・ピシテッリMonica Piscitelliとのコラボレーションで誕生したトマトメニューCarta dei pomodoriに確認できる。

まずは、マリナーラである。「そのベスト・トマトは?」との質問に対する彼の答えは、「一概には言えない、微妙なテーマ」であった。マリナーラは、材料から水分が抜けて正に骨と皮の状態になるため、生地とトマトの焼成に高度な技術が求められる。つまり、ピッツァイオーロの腕が、容赦なく明らかになる1枚なのである。
 これを考慮した時、正確な回答「マリナーラには、『いつでも必ずベストマッチングが実現する』トマトは存在しない」が引き出される。ただし、適正な生地と、最適の焼成と相まって、見事なマリナーラを生み出す優れたトマトは、存在する。
 トマトの咀嚼性も、重要である。つまり、トマトの中でもこれに関係した特徴 - 強力な繊維質、豊かな水分含有量、硬い皮 ー がポイントとなるのである。マリナーラに用いられる原料はわずかであるからこそ、材料は吟味され、これを口にする顧客の味覚を満足させるものでなければならない。
 ピッツァイオーロは、トマトが持つ上記3つの特徴を研究し、選り抜き、これを生かした一品を完成させる役割を担う。
 マリナーラに適したトマトとしては、まずヴェスヴィオ産ピエンノロDOP pomodori del piennolo del Vesuvio DOPが挙げられる。塩味が強く、火山性特有の特徴を持ち、皮が厚いこの品種は、くし形に切って、そのとがった味わいを際立たせる新鮮なイワシと、良質なEVOオイルとタッグを組ませた時、ベストパフォーマンスを展開する。

 軽石を大量に含んだ土地で育つ、ラッタ―リ山脈産のコルバリーノpomodorino corbarinoも、マリナーラで見事な仕事ぶりを発揮するトマトである。
 サンマルツァーノpomodoro san marzanoのマリナーラも、甘く見てはいけない。ただし、例の焼成問題がここに頭をもたげる。水分が多いトマトなため、生地によっては味が思うように「スパーク」し切れない結果となる。
 おいしいマリナーラに向けた選択肢としては、(これまたヴオロの手による)ブレンドしたトマトのトッピングも、実はあなどれない存在である。ブレンドすることで、各々のトマトが持つ様々な官能的特徴が立ち上がると同時に、相互にバランスをとるからである。

ただし、トマトの最大の審判は、各消費者の舌である。そのため、この論議には、今後も一層の展開が予想される。

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